12月2016

久米島紬 胴抜き仕立て

【神奈川県大磯 U様 久米島紬】

今回、ご紹介するお着物はちょっと感慨深いお着物です。
というのも、本来こちらの久米島紬のお着物はU様の持ち物ではなく、W様という男性の方のお着物でした。
U様からご連絡をいただいた時に、そのW様がお亡くなりになられて奥様から譲り受けたというお話でした。

私がまだ江東区に住んでいたころ、W様、奥様共にお付き合いをさせて頂いており、色々なところへもご一緒させていただきました。
W様はジャーナリストという事もあり、とても博識で私の知らないお話しを沢山聞かせてくださいました。
お話ししてくださる言葉1つ1つに重みがあり、それが今の私には宝物の様に心の中に残っています。

「才能というのは、その仕事を続けていけるという事も才能の1つだから。」

そうおっしゃって下さったW様の言葉が今でもこの仕事をする上での心の支えになっています。

私の中ではW様ご夫妻と愛犬のワンちゃん2匹が仲良く(その当時は)別荘へ向かわれるお車を見送ったのがW様にお会いした最後だったような気がします。

今回のお着物もU様の元で長く愛されるお着物になっていただけると思うと、本当にうれしく思います。
そしてW様のご冥福を心よりお祈り申し上げます。

   

宗廣佳子作 紬

【新宿区G様 宗廣佳子作 紬】


郡上紬を復刻させた故・宗廣力三氏を父にもつ宗廣佳子氏の作品です。
佳子氏は郡上紬ではなく、長野県で信州紬を制作されております。
附下調に織られた紬はお召しになる方を引き立ててくれそうな気品を感じます。
G様がどんなコーディネートでお召しになるのか想像するのも楽しみです。

  

久呂田明功作 辻が花訪問着

【大田区K様 久呂田明功作 辻が花訪問着】

東京友禅、久呂田明功氏の辻が花訪問着です。
久呂田氏は鬼シボ縮緬に染められることが多く、それが特徴の1つにもされています。

仕立て上がったお着物をこうやって衣紋にかけて見てみると、存在感は抜群です。
こういったお着物は皆さまどちらに着て行かれるのだろうと思いをはせて縫っております。

先代の久呂田明功氏が浦野理一さんの図案も描かれていたといいます。
そういう目線で見ると、当たり前ですが似ていますね。

   

松井青々 蝋吹雪染め 羽織

【大田区K様 松井青々 蝋吹雪染め 羽織】

季節が過ぎるのは早いもので・・・とはよく言ったもので、私は自分のサイトを更新する時に感じます。
自分のサイトを更新する際に『こんなに更新していなかったっけ?』と気付くことが多いです。

さて、今回は京友禅の松井青々氏の羽織です。
蝋吹雪染という技法で染められた羽織です。
蝋吹雪、撒き蝋などと呼ばれたりしますが、筆に蝋をつけそれを飛ばしていくというろうけつ染めの加工の一つです。
蝋が吹雪の様に飛び、その部分が防染され染まらないという事になります。

羽裏の『青々』文様が雪の結晶の様に見えて、図案にも凝っているのが分かります。