仕立てとお直しに関するお話

墨流し文様 結城紬

【世田谷区K様 墨流し文様 結城紬】

以外にも墨流しの様な文様は柄出しが難しかったりします。
というのも、背縫いなどで柄を合わせて見てみると、思いもかけない形を作り出してしまう事があるのです。
もちろん、背縫いだけではなく、脇、上前などもそうです。
この美しい流れを壊さぬように柄合わせを考える事も着物を仕立てるのに重要な事です。
せっかくお着物をお誂え頂くのですから、少しでもベストな柄の配置でお召しになっていただきたいと思っております。

  

ひげ紬 男物 羽織

【新宿区W様 ひげ紬 羽織】

前回と同じく新宿区W様のひげ紬の羽織です。
羽裏に紅型の生地をお持ちいただいたので、手に入れられた経緯をお伺いしてみたところ、沖縄に出張に行かれた際にたまたま見つけた紅型の工房で作成をお願いしたのだそうです。
たまたま見つけたという偶然が、何かのご縁という感じがして心をそそられますね。
羽裏の画像はお仕立て前の物で、薄い柄は下前の前身頃になっています。

びんがた工房「くんや」さんの作成です。
ブログを拝見すると色々と注文を受けてくださるようです。

 

アンティークの振袖を訪問着へお仕立て直し

【神奈川県海老名市S様 アンティーク訪問着】

振袖のお着物を短いお袖の訪問着にお仕立て直しをいたしました。
本来は下記の振袖です。

ただお袖をそのまま短くすると、袂の柄が全てなくなってしまいます。
そこで、袖山を回して左前袖と右後袖に華やかが柄を持ってくるように配置。
S様のお袖丈は長めの60㎝をご希望でしたので更に華やかな印象になります。

そこで問題になるのが、家紋。
元々は5ツ紋でしたので抱き(胸)紋とお袖の1部分に残ってしまいます。
これを隠す為には、上から柄を足すか、刺繍を入れるという方法があります。
ですが、柄を足してしまうとそこだけ顔料の固い感じが残ってしまいますので刺繍をおすすめいたしました。

抱き紋の上に刺繍を入れました

他にお袖に残っていた紋の上にも刺繍を入れてあります。
右袖の真ん中少し下の万寿菊が刺繍です

お客様と確認を取りながら進めていきますので、勝手に進めてしまう事はありません。
どうしても取れないシミに刺繍を入れる事もありますが、1か所に入れてしまうとそこだけ浮いた感じになる場合もありますので、バランスを見ていくつか入れる事もあります。

こうして違う形で蘇ったお着物をお召しいただける事が、お客様と私にとって1番の喜びだと思っております。

紅花紬 単衣

【港区S様 紅花紬 単衣】

紅花はエジプト原産と言われ、シルクロードを経て日本に渡来したといわれています。
紅花は梅雨の頃に花を咲かせ、棘のある葉と蒸し暑さの中で行われる収穫はとても大変な作業だろうと想像できます。
紅花の”紅”は収穫する娘たちの手から流れる血の色とまで言われるほどなのです。
確か、紅花の産地の山形県では収穫体験があったよう記憶しておりますが、今もされているのでしょうか・・・

さて、今回ご依頼いただいた紅花染めの紬。
黄色から水色に変わるグラデーションになっています。
徐々に変わっていく色合いがとても爽やかな印象を受けます。
S様のご希望により、お顔周りに水色がきた方がお顔映りが良いという事で、色の出方もお伺いしました。
今回の様に、「この色を掛衿に。」などのご要望はお気軽にお伝え下さい。
本来単衣の季節は6月ですが、紬の単衣は5月にお召しになっても問題ないと思います。
5月の爽やかな風が通り抜けそうです。

 

男物 琉球絣 

【新宿区W様 男物 琉球絣】

男物のお仕立物です。
八掛は少しグレーがかった薄紫色。
男物の裏地は通し裏と言って、上から下までつながっているものが販売されておりますが、『仕立屋 凛』では八掛と胴裏でおすすめしております。
というのも、通し裏は色のバリエーションが少なく、裾が擦り切れた場合のお直しが大々的になってしまいます。
八掛を使用すれば、先にあげた問題点は素早く解消されるのですのでおすすめしております。

 

裄の決め方

裄の寸法はお好みもありますが、私はあまり長くしないことをお勧めしております。
私自身の裄は1尺7寸5分ですが、1尺7寸の着物を着てもあまり違和感を感じませんし、人から『裄が短くておかしいよ。』と言われた事もありません。

では実際にどのくらいの寸法にしたらよいのでしょう。
測り方にもよりますが、私は腕を斜め45度にして測り、手首のぐりぐりがギリギリ隠れるくらいの寸法にしています。
短い所で、ぐりぐりが出るくらいの寸法までOKだと思っています。
その方の着物のライフスタイルでも変わってくると思いますが、長い裄の寸法でご着用されると袖口も汚れますし合理的ではないのです。
ですが、1番問題なのは身幅が大きくなってしまうという事です。
裄と身幅は密接な関係でして、皆様あまり考えつかないところだと思いますがこれも近々お話させていただこうと思っています。

洋服に慣れてしまっている私たちはどうしても裄を短めにという発想になれません。
先ほども書きましたが、斜め45度で裄の長さを測っておりますので、腕を降ろした状態にすれば肌の部分は割と出ます。
長袖の洋服は腕を降ろした状態でも手首まですっぽりと隠れ、その感覚に慣れてしまっているのでしょう。
ですが、洋服と着物は仕立て方が違います。

最初に決めた寸法が本当に正しい寸法とは限りません。
セカンドオピニオンという言葉がある様に、専門知識がある別の所で寸法を測ってもらうのも1つの解決策かもしれません。
着物だけではなく、襦袢、羽織、コートとすべてに関わってくる問題ですので寸法を決定するのは最初の着物では無い方が良いかもしれません。

附下から長襦袢にお仕立て直し

【世田谷区U様 長襦袢】

今回の長襦袢は附下だったお着物を長襦袢にお仕立て直しをさせていただきました。
生地も薄手の生地という事もあり、お色も淡い翡翠色で長襦袢にするのに良いのでは、という事でお仕立て直しさせていただきました。
出来上がりを見ても刺繍部分も上手く配置出来ましたし、U様も「附下では着ないので、長襦袢にしてよかったです。」とおっしゃっていました。
こういったお直しもできるので、皆様もご参考になさって下さい。

雨コート

【江東区S様 雨コート】

日本の雨の季節と言えば真っ先に梅雨を思い浮かべますが、季節が秋に変わる今も秋雨前線の雨の季節となります。
一口に雨コートと言っても用途によっても色々あると思います。

雨が降るか降らないかくらいの時はバッグに入れて持ち歩けるコンパクトで軽いもの。

本降りの雨にはコンパクトというよりも、しっかりと防水された大島紬などが良いと思います。
生地が軽いと風でコートの裾がはためいて、裾回りが気になったりするものです。

こちらは生地は化繊ですが地厚のしっかりとしたもの。
防水加工も施されておりました。
雨が降っているというだけで、気になってしまう個所が増えるものです。
少しでもそのシーンにあった着やすくてそして楽しめる生地を選ぶのも良いのではないでしょうか。

染め結城紬

【大田区O様 染め結城紬】

こちらのお着物をご依頼の際、前回のお仕立物をお召しになっていらして下さいました。ありがとうございます。
着物姿を拝見させていただくとやはりアドバイスしやすいです。
『全体的な寸法はちょうど良いです。』
という事でしたが、今回は微調整というくらい少しの寸法変更をさせていただく。
今回変更したのは衿付けの加減と前巾。“加減”という言葉がぴったりというくらいの微調整です。
後日『更に体にフィットしました!』とメールでご連絡がありました。
少しの事で着心地は変わります。
何よりお客様が良くご存じなのです。

こちらのお着物は結城紬に染めを施したお着物です。
お仕立てをご相談の際、『胸元にサーモンピンクの小花を持っていきましょう。』とご提案。
割と細かく柄だしの指定もできますのでお気軽にご相談ください。

八掛も卵色の紬の暈し。
春は菜の花、秋は菊のイメージでお付けしました。

 

花柄小紋

【江戸川区I様 花柄小紋】

深い青地に花柄が映える小紋です。
『お袖丈をなるべく大きくしたい』というご希望で1尺6寸(約60㎝)にお仕立てできました。
お袖丈は1尺3寸という標準寸法がありますが、それに合わせる必要はありません。
お好きな丈にお仕立てが可能です。
丸みも同じく、お好きな大きさにできます。
殆どの呉服屋さんでは、こちらから言わない限り袖丈と丸みは標準で仕立てられてしまうと思います。
小さい事ですが覚えておいた方がいいと思います。

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後日というかすぐにお召しになったお写真を送って下さいました。
アンティークの帯を締めて、お着物ととてもよく似合っておりました。

ご主人のお着物もお待ちしております!