着物にまつわるお話

花菱文様の江戸小紋

【千葉県船橋市K様 花菱文様の江戸小紋】

花菱文様の江戸小紋です。
このお着物は無地の白生地ではなく、松の地模様が描かれた生地を使用しています。
江戸小紋には珍しいのではないでしょうか。
地色は薄黄に淡い珊瑚色の花菱がとても可愛らしく、八掛も花菱と共色に近いお色でお着物を引き立てているように思います。
おしゃれ着というよりも少し改まった感じです。

「江戸小紋を披露宴に着てもよいですか?」
というマナーに関する質問をいただいたりすることがあります。
江戸時代には家紋を入れなくても正装であったという話もありますが、今の時代にそのまま引き継いで良いかというと難しいところですね。
元々は男性の裃ですし・・・

マナーとは相手に対して不快な思いをさせないという事が第一です。
私としては結婚式の様な華やかな場所には、華やかな訪問着や附下をお召しになって頂きたいと思っています。
洋装で言うとアフタヌーンドレス(昼の場合)となります。
お迎えする側は黒留袖やモーニングといった格の高いお着物で迎えてくれているのですから、こちらも相応しいものを着ていかなくてはいけないのではないでしょうか。
自分が何を着たいかという事ではなく、相手の立場を考えると何が相応しいかが分かりやすいのではないかと思います。

  

紅花紬 単衣

【港区S様 紅花紬 単衣】

紅花はエジプト原産と言われ、シルクロードを経て日本に渡来したといわれています。
紅花は梅雨の頃に花を咲かせ、棘のある葉と蒸し暑さの中で行われる収穫はとても大変な作業だろうと想像できます。
紅花の”紅”は収穫する娘たちの手から流れる血の色とまで言われるほどなのです。
確か、紅花の産地の山形県では収穫体験があったよう記憶しておりますが、今もされているのでしょうか・・・

さて、今回ご依頼いただいた紅花染めの紬。
黄色から水色に変わるグラデーションになっています。
徐々に変わっていく色合いがとても爽やかな印象を受けます。
S様のご希望により、お顔周りに水色がきた方がお顔映りが良いという事で、色の出方もお伺いしました。
今回の様に、「この色を掛衿に。」などのご要望はお気軽にお伝え下さい。
本来単衣の季節は6月ですが、紬の単衣は5月にお召しになっても問題ないと思います。
5月の爽やかな風が通り抜けそうです。

 

色無地

【目黒区O様 色無地】

水浅葱色の色無地をお仕立てさせていただきました。
少しグレーを帯びた落ち着いたお色です。

八掛は共布ではないのですが、表地の共色の八掛です。
格の高い留袖、訪問着、振袖は共生地の八掛が付いています。
色無地の八掛も共布ではなくても、共色で選んでいただくと良いかと思います。

本場奄美大島紬

【品川区W様 本場奄美大島紬】

お母様の遺された大島の反物をお仕立てされたいという事でした。
こちらの大島は本場大島紬ではなく、本場奄美大島紬です。
その中でも泥藍大島と呼ばれるものになります。
大島紬の産地にも、奄美大島、鹿児島県、宮崎県都城があり、他にも村山大島なども含めて表すこともあります。
大島紬特有のサラッと着心地の良い感触が何とも言えず、気持ち良いです。
お召しになりやすいお着物の1つだと思います。

表地にいくつかのお色が入っておりますので、八掛は藍色系統のお色の方が帯合わせがしやすいと思いお勧めしました。
楽しんでいただきたいと思います。

 

単衣蔦の葉柄小紋

【目黒区N様 単衣蔦の葉柄小紋】

秋に向かうこの季節にちょうど良い単衣のお着物。
単衣のお着物選びはなかなか難しく、皆様迷われます。
通常、9月から単衣10月から袷と言いますが、そう上手くはいきません。
改まったお席でない限り、その日の気候により変更していった方がベター。
10月初旬はまだ温かい日もあります。
洋服の方々は半袖OKなのに着物は袷じゃなくてはいけないなんて考え物です。

単衣にするには少し薄手の生地。
季節の関係ない文様であれば何でも構いませんが、秋であれば秋の季節が感じられるもの。
冬の文様はNGです。
着物は季節感を大事にして欲しいと思います。
生地と文様とを上手く取り合わせて、コーディネートを楽しんでください。
それが着物の楽しい所でもありますから。

 

戦争柄 男物小紋

【港区M様 戦争柄 男物小紋】

戦争柄とは言えど、可愛らしいおもちゃの様な柄。もちろん戦前の生地です。

M様は趣味性が高い柄がお好きで、以前は某ブランドのモノグラム柄の浴衣をお仕立てさせていただいた事があります。
最初に見た時はさすがにびっくりしましたが、カッコ良かったですね。
その浴衣で飲みに行くと、よく写真を撮られます。とおっしゃっておりました。
お仕事がデザイン系なので、やはり個性的な柄がお好きなのかなと思っております。
以前、私が森下に住んでいた頃は富岡八幡宮にソフトビニール(ソフビ)の人形を探しに行った帰りに寄って下さったのを覚えております。

戦争柄についての記事→こちら