着物の話

寸法について思う事(和裁士としてのあり方)

先日お伺いしたあこや着物教室でも寸法のお話をさせて頂いたので、今日はちょっと着物の寸法について私が思う事をちょっと書いてみようと思います。

皆さまはご自身の着物の寸法はどこまでご存じでしょうか?
着物のマイサイズは和裁士や呉服屋さんが決めてくれるものだと思っていらっしゃるのではないでしょうか。
私が思うマイサイズとはお客様と和裁士(もしくは呉服屋さん)が一緒に考えていかないと出てこないものだと思っています。

最初に注文した時のサイズはもちろん自分が指定する寸法ではありませんが、それを元に自分に合っているかどうかを判断されるのは最終的にはお客様自身なのです。
というのも、”着心地”は着ている方にしか分からない事だからです。
いくら和裁士や呉服屋さんが「これがあなたのベストな寸法です!」と言っても、ベストかどうかを決められる(決めていい)のは着ている本人だけなのではないでしょうか。
例えば、私からみると『かなり大きいサイズの着物を着ているな。』と思ってもそれが着心地が良いというお客様もいらっしゃるのです。
何を持って着心地が良いというかは、お客様に依る所が大きいのです。

「自分に最適な寸法を出すのに10年かかりました。」
という方もいらっしゃいましたが、実際にはそれくらいかかる事なのかもしれません。
何故なら、今まで洋服しか着てこなかった方がお着物の着用感を最初から分かるはずないのです。

とは言っても、あまりにも見当違いな採寸の仕方はどうかと思っています。
『最初からベスト』をお客様は望むのかもしれませんが、自分の好みの着方や癖などが分かって初めてマイサイズにたどり着けるものなのです。
もし近道があるのだとしたら、沢山お着物をお召しになることです。
10年とは言わなくても、少しでも早くそこへたどり着けるお手伝いをするのが和裁士の役目だと思います。

そこで私(和裁士)としては何が出来るのかを考えた時に、お客様のご相談にいつでものるという事だと思っています。
些細な事でも気軽に言っていただける関係を持てたら良いなと思います。
お客様との関係は常に対等でありたいと思っています。どちらかが上でどちらかが下という関係では上手くいきません。
その信頼関係を保つ努力も惜しみません。
何年たっても共にパートナーであり続けるという事が、私の考える和裁士の理想像です。