お仕立てに関する話

『自分を知ってもらう』という事

先日、いつも行く美容院へ行ってきました。
いつものスタイリストさんですが、かれこれ10年以上のお付き合い。

それほど髪形を変える方ではないのですが
「今回はちょっと短くしてもらおうかな。」
そんな感じでオーダーしています。
「この間はこんな感じだったので、今日はこんな感じでどうですか?」
という感じですぐに分かってもらえます。

でもこれってすごく重要な事だと思っています。
スタイリストさんは私より7歳位年下だったと思いますが、年齢は関係なくお互いに尊重しあわなければ長くは続かないと思っています。

その後、久々の整体へ。
だいぶ長くあけてしまってしまったのですが(多分3年位)、会えば以前と同じように接してくれます。

「だいぶ筋肉が衰えましたね。」
とショックな一言!
自分でも気づいてはいましたが、言われると心に突き刺さります(泣)
「テレビを見ながらでもいいので、腕を大きく振って足踏みしてください。」
「が、頑張りますっ!」

自分の状態を把握していただけるというのは、ユーザーからするとありがたいです。

自分の仕事に置き換えても同じ事だと思っています。
お仕立てとは、着物の形になっていればいいというだけでなく、お客様のお好みや体系の変化を気にしつつお仕立てが出来れば1番いいのではないかと思うからです。
私からのアプローチも大切ですが、お客様からのアプローチの方が重要かもしれません。
着方の好みや着物の趣味など伝えてくださるお客様の方が少ないのが現状です。

お着物に関係ないお話しでも全く構いません。折角お話しできる機会を与えて頂けたのですから、お会いする時は色々な事をお話ししたいと思っています。
お互いを知るには双方の努力が不可欠ですが、それには多少なりとも時間が必要かなと思います。
どんなお仕事でもそうだと思いますが、『お客様とのいい関係』を作っていくことも仕事の内なのです。

寸法について思う事(和裁士としてのあり方)

先日お伺いしたあこや着物教室でも寸法のお話をさせて頂いたので、今日はちょっと着物の寸法について私が思う事をちょっと書いてみようと思います。

皆さまはご自身の着物の寸法はどこまでご存じでしょうか?
着物のマイサイズは和裁士や呉服屋さんが決めてくれるものだと思っていらっしゃるのではないでしょうか。
私が思うマイサイズとはお客様と和裁士(もしくは呉服屋さん)が一緒に考えていかないと出てこないものだと思っています。

最初に注文した時のサイズはもちろん自分が指定する寸法ではありませんが、それを元に自分に合っているかどうかを判断されるのは最終的にはお客様自身なのです。
というのも、”着心地”は着ている方にしか分からない事だからです。
いくら和裁士や呉服屋さんが「これがあなたのベストな寸法です!」と言っても、ベストかどうかを決められる(決めていい)のは着ている本人だけなのではないでしょうか。
例えば、私からみると『かなり大きいサイズの着物を着ているな。』と思ってもそれが着心地が良いというお客様もいらっしゃるのです。
何を持って着心地が良いというかは、お客様に依る所が大きいのです。

「自分に最適な寸法を出すのに10年かかりました。」
という方もいらっしゃいましたが、実際にはそれくらいかかる事なのかもしれません。
何故なら、今まで洋服しか着てこなかった方がお着物の着用感を最初から分かるはずないのです。

とは言っても、あまりにも見当違いな採寸の仕方はどうかと思っています。
『最初からベスト』をお客様は望むのかもしれませんが、自分の好みの着方や癖などが分かって初めてマイサイズにたどり着けるものなのです。
もし近道があるのだとしたら、沢山お着物をお召しになることです。
10年とは言わなくても、少しでも早くそこへたどり着けるお手伝いをするのが和裁士の役目だと思います。

そこで私(和裁士)としては何が出来るのかを考えた時に、お客様のご相談にいつでものるという事だと思っています。
些細な事でも気軽に言っていただける関係を持てたら良いなと思います。
お客様との関係は常に対等でありたいと思っています。どちらかが上でどちらかが下という関係では上手くいきません。
その信頼関係を保つ努力も惜しみません。
何年たっても共にパートナーであり続けるという事が、私の考える和裁士の理想像です。

あこや着物教室@白金台

お仕立てをご依頼いただいております♡ボンジュールきもの♡のあこや着物教室へ行ってきました。
生徒さんの採寸などを兼ねて、お着物の仕立てに関する事などを少しですがお話しさせていただきました。

その時の様子→♡ボンジュールきもの♡

生徒さんも皆さま素敵な方ばかりで、こういった方々が集まるのもあこやさんの人柄なのだなと感じました。

話は変わりますが
あこやさん、W成人式のお写真を撮ったという事でそのお話しでも盛り上がりました!
私のW成人式は残念ながらとっくに過ぎ去ってしまいましたが(笑)、着物の良さが分かる年齢になってもう1度振袖を着るというのはとても素敵なことだと思います。
W成人式がもっと広まっていくと良いなと思っております。

そう考えると黒柳徹子さんて凄いです!振袖を着ていても違和感ないです。

最初が肝心 (浴衣のお仕立のお話)

東京の花火大会は隅田川から始まる。(と思っています。)

最近は男性の浴衣姿を見る事も多く、男着物の第一歩としてはとても良いのではないでしょうか。
さて、そんな中、とても短い丈の浴衣を着ている男性を見かけました。
踵から20㎝上と言いましょうか、脛の真ん中位までの着丈しかありません。
浴衣なので元々着丈が短めの物を購入して、お洗濯したら更に縮んでしまったのでしょう。
浴衣と言えど、もし私の相方がそんな着丈の物を着ていたら、「一緒に歩かないで!」と言ってしまうかもしれません。

「木綿は縮みますよ~。」と声を大にして言いたいです。
一般的に言うと、水通しをしてお仕立する方がはるかに少ないのです。というか、お仕立て前のアイロンだけで作成してしまう方が殆どだと思います。
私は必ずお仕立て前に水通しをしますが、縮む生地ですと2尺(約76センチ)の長さで8分(約3センチ)縮みます。
という事は1反(12~13メートル)で1尺2寸(約48センチ)縮むという事になります。
生地によってはもっと縮む物もあると思います。

既製品はともかく、浴衣を反物からお仕立するのでしたら水通しを必ずしてください。
出来れば呉服屋さんでなく、和裁士が水通しを行ってくれるところがベスト。
呉服屋さん経由だと、洗い屋さんが最後に機械で反物を成形します。
この『機械で成形』がせっかく縮めた生地を伸ばしてしまう事になってしまうので、本来の縮めるという意味がなくなってしまいます。

最初に水通しをしておけば、お仕立て後に劇的に縮んでしまう事は避けられます。
気に入った反物であれば尚更手をかけてあげてください。

本日のお客様 (フルレングスコートのご依頼)(男物結城紬ASのお仕立て直し)

本日は2組のお客様です。
まずは1組目のS様。最初は他のお客様のご紹介でいらしてくださいました。
ご自身のお着物のお直しと、最近別の所でお仕立てされた大島紬の裄直しをさせていただきました。
大島紬を羽織っていただきましたが簡単に羽織っていただいた時点で胸の辺り(帯の上の辺り)の布が余っているのが分かります。
裄を大きくとるために身幅が大きく仕立てられていることが分かります。
今回は裄直しのみでしたが、大島紬に関しては洗張をするまでこれで着ます!とおっしゃっておりました。
そして本日はコートにお仕立されるウールの反物をお持ちいただきました。
フルレングスのコートになさりたいという事でしたので、仮試着のお話などをさせていただきました。

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そしてもう1組は男性のお客様。
洋服よりも着物の方が長く着られるという事で、最近はいらして下さる時もお着物姿のE様です。
男性の方が趣味性が高いというお話を前回しましたが、E様もそのおひとり。
お着物に合わせて蛇の目傘まで購入。今日はその傘も持ってきて見せてくださいました。
傘を開いてみると、外側からはあまり分からないのですが、植物の葉が傘の中から透ける凝った作りになっています。

さて、お仕立物ですが本日のご依頼は結城紬アンサンブルのお仕立て直し。
もしかしたら黄八丈を購入するかも・・・とおっしゃるE様。
お着物を楽しまれている事が良く分かります(笑)

本日のお客様 (コートのお渡しとお仕立依頼)

港区K様。
出来上ったコートを引き取りにいらして下さったのと、お仕立てのご依頼にいらしてくださいました。

久々にお着物をお召しになったそうですが、お仕立てしました浦野理一のお着物を着ていらしてくださいました。
こちらのお着物です。→2015年1月30日 きものLabo
鮮やかなお色が印象的なお着物ですが、人が着ると体の陰影がつき、更に美しく見えました。
着物だけで見ていた時は思わなかったのですが、そのハッとするお色がとげとげしくなく優しい感じに見えるのが不思議です。
K様のお人柄が出ているのかもしれません。
とてもきれいなお姿に「写真を撮らせてください!」とお願いしたのですが、お着物は久々にお召しになったので今日の着物姿はあまり気に入っていないという事で、本日お渡ししたコートを着た後姿を撮らせていただきました。

他にもお着物のお仕立やお直し、しみ抜きなど数点をご依頼いただきました。
今回もとても素敵なお着物があり、またご紹介させていただきたいなと思っております。

本日のお客様 (大島紬アンサンブルを1枚のお着物にお仕立て直し)

目黒区からお越しのI様。初めていらして下さったお客様です。

ご依頼のお着物は、男物の大島ASを1枚のお着物にお仕立て直しをご希望です。
I様は身長がお高くてなんと176㎝の女性の方!
『仕立屋 凛』最長記録を更新です!

身長が高いと比例して裄が長くなりますが、1尺9寸5分(約74㎝)に収まるようにしたいと思っています。
というのも、表地ももちろんそうなのですが、裏地(胴裏)の1尺5分(約40㎝)巾でお仕立てできる様にしたいからです。
裄の割り振りとしては、袖巾1尺(約38センチ)、肩巾(約36センチ)になります。
呉服屋さんでは裄2尺(約76センチ)以上のお仕立物もありますが、基本的に身長が180センチを超える方でなければ必要ないと思っています。男性、女性共にです。
「裄が長い方がエレガントです。」と販売される方もおられるようですが、それは他の寸法との兼ね合いを考えないと全く野暮な着姿になってしまいます。

話がそれましたが、今回のお着物は表地には接ぎを入れなくてはなりませんが亀甲文様ですので気にならない程度に仕上がると思います。
何代か前の方がお召しになっていたお着物がまた蘇るのは嬉しいですね。
ご先祖様に喜ばれるように私も頑張ります!

本日のお客様 (色無地お仕立てご依頼と紬のお直し)

初めていらして下さいました世田谷区のM様。

久しぶりにお茶を再度習い始めたそうで、昔のお着物のお直しとお仕立てのご依頼にいらしてくださいました。
色無地は白生地から染めたものをお持ちいただきましたが、少々シミがありましたのでしみ抜きのお見積りをしてからのお仕立になります。
ご希望であれば、着用時に隠れてしまうところにシミを入れて、出るところだけお見積りという事も可能です。
どのくらいの金額をかけてお直しするか、はたしてその金額をかけてどの位お召しになるかどうかはじっくりと考えて下さって構いません。
おうちに帰ってから再度ご連絡いただいた方が、落ち着いて決められるかもしれません。
そういったことを急かすつもりは全くありませんので、じっくり考えてほしいと思っています。

もう1枚は大島紬のお直しです。
以前お仕立てされたままで、まだ1度も着用されていないそうですが、少々寸法をお直しすればお召しになれます。
お茶をされる場合は身幅は割と重要な寸法ですので、ご着用のご感想をいただけるとありがたいです。

本日のお客様 (羽織から帯へのお仕立て直し依頼)

先月いらして頂いた方のご友人のM様。
ご友人から羽織をお預かりしており、直せれば羽織でお召しになりたいとおっしゃっておりましたがサイズが出せず、帯へのお仕立となりました。
着物や羽織から帯へお仕立て直しは出来るのですが、いくつか制限もあります。
もちろん帯用に柄出しがされていないので柄の向きなどを考えなくてはいけません。
他にも解いた時のスジなどが出ない様になど、いくつかクリアしなければ帯にはならないのです。
今日は柄出しなどの確認をしていただきました。

着る物ではなく帯に変われるのもまた楽しいものですね。
ちなみに帯のお仕立は帯屋さんへ依頼しております。

他にも京都で購入されたお着物や草履のお話や、お友達と着物でお出かけされたお話など、面白いお話を沢山聞かせていただきました。
楽しいお時間をありがとうございました!

本日のお客様 (振袖のお直しのお渡し)

お昼から雪が降るかもしれないとの予報に少し早くいらして頂きました。

お預かりしていた振袖は、裾ふきに綿が入った立派な裾でしたので、それを細くお直しするのと、身丈直しをさせていただきました。
他にもお客様のご依頼でパールトーン加工をいたしました。
ガード加工をかけるのは皆様それぞれの用途があっての事ですが、当てはまるのはこの様な事例だと思います。

・お着物の色が薄く汚れが目立ちそうなもの。
・訪問着以上の礼装用。
・男物場合、礼装用(色紋付、黒紋付き)。
・雨用のお召し物。

ガード加工をするとシミが付かないわけではなく、付きにくくなると捉えていただく方が良いと思います。
シミが付いてしまったら、なるべく早くシミ抜きに出す事と、自分で処理しないという事です。
古くなってしまったシミほど落ちにくくなります。
何事も早めのメンテナンスを心がけてください。