夏物

100年前の越後上布

【豊島区S様 越後上布】

こちらの越後上布は、お知り合いの方のお婆様の反物を頂いたそうです。
「多分100年前位の物だと思う。」とS様はおっしゃっておりました。
およそ100年前というと大正時代の初め頃です。
私の祖母が生まれた頃だと思うとかなり昔ですね。
祖母の育った時代、写真を見ても着物姿の方が多く、殆どの方々は着物で生活していた時代です。

これだけ大きな亀甲文様になると、120亀甲、140亀甲の様な繊細な技を織り込んだ反物とは違った素朴な美しさを感じます。
着物で生活していた時代と、趣味で着物を着る現代とでは何を着物に求めるのか、きっと違うものだと思います。

お着物は着ている人がいて初めてその美しさが出てくるものだと常々思っています。
これからも長く楽しんで欲しいです。

  

虫籠柄 紗絵羽織

【大田区K様 虫籠柄 紗絵羽織】

虫籠柄の紗の絵羽織です。
元々は紗無双の羽織でしたが、単衣仕立てでのお仕立てをご希望されました。
夏物の羽織をお召しになっている方を拝見すると、お着物の上級者なのだなと思い、まじまじと見てしまいます。
紗の透け感はとても涼しげに感じますし、見ている側にとって涼やかさを与えてくれるのもお着物の魅力の一つだと思います。

小千谷縮 摺り友禅染

【品川区T様 小千谷縮 摺り友禅染】

摺り友禅染の小千谷縮です。
夏のおしゃれ着の定番である小千谷縮は毎年何枚もお仕立てしています。

夏物はお仕立て前に、ほぼ私が水通しをしています。
水を通す事によってシボが浮き立ってくるのが分かります。
このシボがあることによって涼やかにお召しになれるのですが、反物の状態だとあまりシボが目立ちません。
アイロンがけをしてしまうと縮の特徴であるシボが無くなってしまうので、アイロンもかけません。

お仕立て後のお洗濯後も、着物ハンガーにきれいにかけて干して頂ければアイロンがけは不要です。
お手入れが楽なのはうれしいですよね。(特に夏は!!)

 

百合文様 紗羽織

【大田区K様 百合文様紗羽織】

夏に羽織は「暑い!」と思われるかもしれませんが、エアコンがきいている場所などで、意外と役に立ちます。
K様の場合は寒さ対策というよりは、羽織を着ている姿の方がお好きなのだと思います。
着姿までこだわりがあるのはさすがです。

麻 絞り着物

【川崎市N様 麻 絞り着物】

冬ですが麻の仕立てもやっています。
シーズンオフに夏物をお願される方は割と多いです。

こちらの反物は藤井絞りさんのお着物だそうです。
美しい着物・冬号の表紙を飾っているお着物を制作されていると、N様からお伺いしました。
美しい着物の表紙のお着物は袷の訪問着でしたので雰囲気は違いますが、全体的に優しい感じがします。
絞りというと鹿の子絞りが有名ですが、絞りの技法は他にも沢山あります。
総絞りまでいってしまうと、私は怖気づいてしまってなかなか手が出せませんが、藤井絞りさんのお着物は、柄と絞りと空間の組み合わせがほどほどに良い感じで、私はとても好印象を持ちました。

 

若松菱 絽小紋

【江東区K様 若松菱 絽小紋】

若松菱の絽小紋です。
左右対称に描かれる若松菱はおめでたい席に使われる事が多く、どちらかというと礼装のイメージがあります。
今回のお着物は小紋柄ですので、格付けとしては普段着です。
普段着と言ってもちょっといい所にお出かけになる時にお召しになる文様でしょうか。
歌舞伎がお好きなY様ですので、歌舞伎鑑賞にとても良いのではないかと思います。

 

宮古上布

【江東区O様 宮古上布】

後身頃は共布で、下前身頃は同じく宮古上布の生地違いを使いお仕立しました。
小さいお着物を大きくお仕立する為に、色々と工夫できる事があります。
接ぎを入れるのはもちろんですが、出来るだけ共生地、共生地で取れなければなるべく目立ちにくい生地でという方法が良いでしょう。
今回の生地はO様の方でご用意いただきました。
私からの一方的な提案だけではなく、お客様と色々な方法を考えるという事が重要だと思っています。

 

たて涌文様 上布

【江東区H様 たて涌文様 上布】

大胆なたて涌文様の上布です。
こちらは身丈を大きくする為に後身頃に足し布を入れてのお仕立になります。

先日、H様にお会いした時「今年は暑すぎてまだ着ていないんです。」と話されていました。
確かに今年はちょっと異常な暑さ。
猛暑、酷暑という言葉も聞き飽きるほどに聞こえてきました。
麻を着るのも,外出するのもおっくうになるほどの暑さでしたが、来年は出来るだけ沢山お召しになって楽しんで下さい。

 

ぼかし染め 麻着物

【川崎市M様 ぼかし染め 麻着物】

こちらのお着物はアトリエ紀波さんの反物からお仕立させていただきました。
横浜三渓園で行われた日本の夏したく展で購入されたそうですが、私の方にお仕立をご依頼くださいました。ありがとうございます。
M様は紀波さんともお知り合いで、実は私の友人とも職場が一緒だというM様。
人の縁って思わぬところで繋がっていたりするので、面白いですよね。

さて、お着物は墨流しの様な麻のお着物。
紀波さんのお着物は、上品で繊細だといつも感じます。
光に透かした時の透け感もとても美しいお着物です。
暑い夏を少しでも楽しく過ごして頂けたらと思います。

 

千葉あやの作 正藍染め

【港区K様 千葉あやの作 正藍染め】

千葉あやの氏作 正藍染めの夏物です。
個人的に藍染めは染色の中でも一番好きなのですが、千葉あやの氏の藍染は麻の為の藍染めと言えるでしょう。
あやのさんが亡くなられた後は、娘のよしのさん,そして孫のまつ江さんと引き継がれています。
手仕事から出来ている物はどれも素朴で懐かく温かみに溢れています。
機械には出せない、この素朴さに私たちは魅かれるのだと思います。

詳しくはこちらをどうぞ→仙台、宮城のてしごとたち テとてとテ