八掛の選び方。いわゆる『フクロ』についてのお話。
袷のお仕立ての場合、八掛は表地に合ったものを付けて下さいと、何度かブログに書いた事があります。
ざっくりと言えば八掛には柔らか物用と紬用があります。
呉服屋さんでもネットでもそういった『○○用』といった文言を目にした事があると思います。
『○○用』と書かれているからには専用の八掛なのですが、一体何が違うのでしょうか。
簡単に言ってしまえば『生地の収縮率』の違いです。
柔らか物用は縮む生地、紬用は縮まない(縮みにくい)生地になります。
例えば表地が縮まない生地の場合は裏も縮まない生地を付け、表地が縮む生地の場合は裏地も縮む生地を付けるのが一番良いのです。
それを、表地が縮まない生地に縮む裏地を付けてしまう(逆のパターンもあります)とどうなってしまうかというと、いわゆる『フクロ』と言われる状態になります。
というか、自分から「フクロにしてください!」と言っているようなものです。
色が気に入ったからと言って何も気にせず付けてしまうと後々大変な事になります。
要は表地と裏地の収縮率が近い物を選んで付けて下さいという事です。
特に紬の場合、紬用のぼかし染の八掛は既成品の色数がとても少ないので、色数の多い柔らか物用の八掛を付けてしまうのだと思うのですが、画像の様な状態になってしまうとフクロ直しでは対応できません。
また袷にしたいのであれば八掛を紬用に交換してお仕立て直しが一番お薦めになります。
この位フクロになってしまうと畳んで置いてあっても分かります。
最初に表地に合った裏地を付けておけば『フクロ直し』や『お仕立て直し』になる可能性は低くなります。
そして八掛も擦り切れにくい八掛など様々あります。
裾がすぐに擦り切れてしまうといった方は少しお値段は高くなりますが、お仕立ての時に擦り切れにくい八掛を選んでいただくといいと思います。
気に入ったお色の紬のぼかし八掛が無ければ、別染の注文が一番です。
その時に支払う金額としては高くなりますが、最終的にメンテナンスにかかる費用が少なく済むのでコスパがいいと言えます。
八掛交換やフクロ直し、お仕立て直しになる事を考えればそちらの方が断然高くつきます。
呉服屋さんでお仕立てを注文する場合、何も言わなくても表地に合った八掛を選んでくれるはずです。
心配でしたら聞いてみてください。
決して恥ずかしい事ではありません。
もし分からずにネットで注文し、お仕立ててしまった場合はお勉強代にするか、お仕立て前でしたら八掛を買い直すことをお薦めします。
今まで八掛を選ぶ時はそれほど気にしないで選んでいたかもしれませんが、この記事を読んだ今日からは気にしてみてください。
私が自分の着物を仕立てる場合は収縮率の違う八掛は絶対に付けません。
そのくらい気にするポイントです。