お仕立てに関する話

本日のお客様 (大島のお直し 袋直しについて)

ご近所のA様。
大島紬の袋直しをお渡しする。

素朴な疑問として、なぜ袋になるのか。
・お仕立前の地のし(アイロンがけ)が十分でない。
・表地と裏地の収縮率が違いすぎる物を付けている。
大きく分けるとこの様な原因があげられます。

地のしに関して。
大島紬の生地はあまり縮みません。
大島が袋になる場合は裏が縮んでいるので表地がかぶっています。
胴裏があまり縮まないとお考えの方、割といらっしゃるのではないかと思いますが実は結構縮みます。
私はスチームで縮ませてからお仕立をしていますが、スチームを充てると生地が動くのが分かるほどです。
けれども、スチームをかけたからと言って全く縮まないかというかというとそうではありません。
100%縮ませようとおもったら水に漬けるしかないのです。
そこまでしなくても、あとは仕立てでカバーできます。
表地よりも裏地が縮む生地の場合は裏を少しだけかぶらせておきます。

収縮率が違いすぎる物を裏地に付けている場合。
胴裏が結構縮むと先ほどお話しましたが、八掛が縮んでいる場合もあります。
紬には紬の八掛が1番良いのですが、チェニーやパレスの八掛を付けていると更に縮みます。
出来上りの時は表と裏の釣り合いが良くても、お召しになった時の体温や汗で縮んでいきます。
更に地のしがきちんと行われていないともうぐんぐん縮んでしまうのです。

紬の八掛は色揃えが少なく、ぼかしになると更に数少ないものになってしまいます。
それで柔らか物用の八掛を付けてしまうのかもしれませんがこれでは後々にお直し代がかさんでしまいます。
気にいったお色が無ければ、別染めした方が良いのではないかと思います。
最初の出費になるか、後々の出費になるかの違いだけではなく、少ない八掛の色から選ぶよりも良いのではないでしょうか。

今日お渡ししたA様の大島は八掛は紬でしたので胴裏が縮んでおりました。
もうそれほど縮む事はないと思いますが、裏を気持ちかぶらせてあります。
これでまた気持ちよくお召しになっていただきたいです。

本日のお客様 (結城縮の使用感についてのご相談)

世田谷区H様。
先日お渡ししました結城縮の着用感についてメールがありました。
“お茶をする時に上手く着物が捌けずにもたついてしまう。”
という内容の物でした。
以前と寸法を変更したわけでもないので、いらしていただいて拝見させていただく事になりました。

他にもいくつかお着物をお持ちいただいてお召しになっていただき、実際にお茶の時の動作をしてもらいました。
ひざをついて横に移動する様な時に、もたついてしまう(シワがよってしまう)感じがありました。

私の見立てでは、縮という生地はシボがあり、新品の反物でしたのでまだ生地の起毛が落ち着いていないのだと思いました。
居敷当てはついているものの、前身頃の裏には何もついていないので滑りが悪いのだと思います。
その為、生地と生地が擦れる様な動作の時にもたついてしまうのだと考えました。
私も木綿地の裾除けを使用した事があるのですが、歩いていると着物の中でもたついてとても歩きずらかったことがあります。
多分、年月が経てばそれもおさまってくると思いますが、月日が経つのをただ待っているだけでは今の対処ができません。
単衣のお着物ですが、前身頃と衽の裏にも羽二重を付けることが出来ますよとご提案。
更にいえば白ではなく、お着物を同じようなお色の方が目立ちません。

以上をご提案させていただきましたが、もう少し着用してみてH様にとっての最善策を考えますというお言葉をいただきました。
こういう相談が出来るのがとてもうれしいとも言っていただきましたが、私にとってもありがたい事だと思っています。
着用感はお客様それぞれです。
エンドユーザーの声を直に聴けるのは、個人で対応しているからこそ。
呉服屋さんを通してだと、なかなか聴くことはできないものです。
使用感をお伺いして更により良くしていきたいと思うのは、物作りを職業としている者としての使命なのではないでしょうか。
些細なことだと思わずに、色々ご相談いただきたいです。

本日のお客様 (三歳祝着お仕立て依頼)(男物仮試着)

1組目のお客様。
三歳のお着物をお仕立てをご依頼のS様。
おばあ様、お母様、かわいいお嬢様の3人でいらしてくださいました。
お持ちいただいたのは大人物の朱赤の長襦袢とお着物。
その2枚のうち、どちらかをお着物にお直ししたいというご依頼です。
大人物でしたので柄が大きく、まだ小さなお嬢様の体に当ててみてどの程度になるかを見ていただく。
襦袢の方の柄が小さ目でしたので、こちらをお仕立て直しさせていただく事になりました。
襦袢の生地と言ってもお着物の様なしっかりとした生地でしたので、お仕立て直しには問題ない物でした。

「世田谷区の呉服屋さんに何件か問い合わせたら、子供物のお仕立はしていない。」
とお断りのお返事が続いたそうです。
私としては三歳のお着物はお仕立していてもとても可愛く、気持ちも楽しくなります。
どうぞ、楽しみにお待ちいただきたいです。

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2組目のお客様。大田区のI様。
男物の小千谷縮と長襦袢をご依頼いただいておりました。
仮試着をご希望でしたので、本日いらしていただきました。

「出かける時はいつも雨なんです。」
と以前言っておられましたが、本日は晴れ。ジンクス挽回といったところでしょうか。

早速、仮仕立ての小千谷を羽織っていただきます。
「肩幅が大きいんです。」とおっしゃっておりましたが、お着物をお召しになるとよく分かりました。
体は細めのI様ですが、確かに肩幅はがっしりしています。
身丈はこのままでも良さそうですが、動いたりすると丈が少し上がりますし、水通ししてあるのですが、もう気持ち(1センチ程)大きくすることになりました。
身幅も全体で2センチ弱細く、褄下を4センチ長くすることになりました。
着物の寸法が出ましたので、これに合わせて長襦袢を作成して日曜日にお届けと決定しました。

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さて、自称『雨男』のI様がお帰りになった後にお天気が下り坂に。
関東全域で雷注意報が出ていたと思いますが、この近所もものすごい雷雨にみまわれました。
近くに大学や国立病院があるのですが、かなり落ちていたと思われます。
I様のジンクス挽回とまではいかなかったかな、と一人思っておりました。

本日のお客様 (男着物の身丈直し、羽織の裄接ぎ)

中野区からお越しのK様。
最近徐々に増えつつある男性のお客様です。
本日は大島紬のお着物と無地の紬の羽織をお持ちくださいました。
両方共にお爺様がお召しになっていたそうです。

早速羽織っていただくと、やはり裄が短い。
お着物に関しては身丈直しと、出来るだけ裄を出す事になりましたが、羽織の方は縫い代がほとんど無い状態です。
羽織は衿から共布が取れますので、裄を接ぐことをご提案。
縞などは殆ど接ぎが分からなくなるのですが、こちらは無地ですので接ぎ線は分かってしまいましすが、K様のご了解を得られました。
ご愛着があるのでしょうね。

今日の夜は小学校3年生になるお嬢様と盆踊りに行かれるお話を、楽しそうになさっていたのが印象的でした。

本日のお客様 (大島の身幅、袋直し)

自転車やお車でいらして下さるご近所様よりも、もっとご近所のお客様。同じ町内のA様。
「すごく近かったです。」
が、いらしていただいた第一声。

まず、お持ちいただいたのは色無地のお着物。
拝見したところ色焼けがかなりあり、こちらのお直しは諦めることになりました。
そこで、「ちょっと取りに帰っていいですか?」と一旦、自宅に戻られ再度お着物を持っていらしてくださいました。
まずは、大島紬。
こちらは身幅のお直しと袋直しでお召しになれそうです。
もう1枚は、黒留袖。
身幅は大きいのですが、これは柄合わせの為にどうしてもご自身のサイズでは難しい所です。
柄合わせを優先するか、サイズを優先するかどちらかなるのですが、礼装のお着物は着付けていただく方が多いと思います。
「自装でしたら大変かもしれませんが、着付けてもらうのでしたら、着付師の方がきれいに着付けてくれますよ。」
とアドバイス。
こちらはシミがありましたので、シミ抜きのお見積りに出すことになりました。

本当にご近所なので、どこかでまたお会いするかもしれないですね。

本日のお客様 (単衣のお直し) (訪問着お仕立直しと胴抜き仕立てへお直し)

本日1組目のお客様。
昨年もいらしていただいた世田谷区のA様。

本日はお母様がお持ちだった単衣の附下と長襦袢。
身幅がとても大きいので身幅と裄をお直しする事になりました。
お母様は沢山のお着物をお仕立てなさったそうですが、お召しにならなかったお着物もあるそうで、今回のお着物も躾が付いたままの状態で下。
波の文様が裾に入った附下は涼しげで、どちらかというと初夏にお召しいただくといい良いお着物です。
他にも何点かお着物をお持ちいただきましたが、今回は2点のみのお直しになりました。

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2組目のお客様は中央区からお越しのO様。
先にお着物をお送りいただいておりました。
頂いたメールやお着物を拝見すると、とてもお着物の事をご存知でしたので着なれたお方だと思っておりましたが、お着物を始められたのは昨年からなのだそう。
O様はお仕事がお忙しく、本日やっとお会いできました!

お着物は袷のお着物を胴抜き仕立てにお直し。
小紋柄のお着物を羽織へお直し。
上記2点は問題なくお直しできます。
他に、お母様からいただいた訪問着がとても重く少しでも軽くなる様、なにか工夫できませんか?といったものでした。
訪問着の生地自体に重量感があります。
柄を見ると、附下の様な裾ぼかしの文様でしたので、いっそ共八掛を別の既製品の八掛に交換することをおすすめ。
O様から、「裾模様を少し短くしてほしい。」というご希望もありましたので裾を10センチ程短く切る事になりました。
身丈は十分に出来ますので、これでも少し軽くなると思います。
あとは、胴抜き仕立てでお仕立てさせていただく、という形に収まりました。
お客様のご要望は多種多様で、お客様と知恵を出し合う事でとてもいい形に持っていけます。

余談ですが、とても細いO様。
サイズを測らせていただこうと思いましたら
「少し太ったので、痩せてからでもいいですか?トレーナにも痩せる様言われているんです。」
細身のO様ですが、筋トレをなさっているそうで筋肉は割とすごいのだそう。
筋肉にも理想形があるようで、そんなお話にも花が咲きました。
サイズは痩せてから、メールで送っていただく事になりましたので、頑張ってトレーニングしてくださいね(笑)

本日のお客様 (子供物を大人物へお直し、紬単衣お仕立て)

世田谷区Hさま。
前回の体調不良でお日にちを本日に変更していただきました。
その節は大変申し訳ございませんでした。

さて、本日はお嬢様のお着物のお仕立直しのご依頼です。
7歳の七五三の時にお召しになったお着物を大人物へとお仕立て直しされたいという事ですが、7歳のお着物が大人物にお直しできる事をご存じない方も多いのではないでしょうか。
お着物の裁断の仕方は大人物と同じですので、大人物にお仕立できるのです。
もちろん、柄や文様を考えると大人物には難しい物もあるかと思います。
今回のお着物は小紋柄の花丸文様で地色も渋めの水色。
40代までとはいかなくても、20~30代位までお召しになれるようなお色や柄の物は割とあるものです。
デパートで購入される場合、絵羽になっているお着物が多いと思いますが、あえて小紋柄を選ぶ方法もお勧めしたいです。

Hさまの方で洗張を済ませていただいたので、お仕立てしてから汚れなどの加工をすれば大丈夫そうです。

ちなみに、お宮参りの際にお召しになる1ツ身と言われるお着物は3歳にお直しできます。

もう1点はHさまの結城縮。
単衣のお仕立をご依頼いただきました。
9月にご着用という事で、こちらも合わせてお仕立てさせていただきます。

いつもありがとうございます!

本日のお客様 (浴衣のお仕立てご依頼)

世田谷区にお住いのS様。
浴衣のお仕立てのご依頼です。

ピエールカルダン製の浴衣でしたが、柄も個性的。

「せっかくなので、ブランドのロゴをどこかに出して仕立ててください。」というお言葉にハッとしました。
着物の仕立てというと、織り出し部分やロゴは裁ち落してしまったり、見えない部分に持っていくという暗黙のルールがあります。
あえて「出してください。」もありだと思います。
知らないうちに常識の枠の中にいる自分に気が付きました。
この言葉を聞いていなかったら、100%裁ち落していたはずです。
お客様から教えていただくこと、本当に多いです。

さて、どこにロゴを出すかは仕立て上がりでご紹介しようと思っております。

本日のお客様 (羽織丈の仮縫いとご依頼)

目黒区のK様夫妻。
本日は、ご主人の羽織丈を決定していただく為にご足労いただきました。

羽織丈はこれと言って決まったものではなく、お好みで決めていただいてよいものです。
私も男性の羽織丈を考えるべく、落語家さんや歌舞伎役者の方々の画像をこまめにチェックしておりました。
すると、なんとなくですが傾向が見えてきました。
職業でお召しになっている方は短め、趣味でお召しになっている方は長めの傾向があるように思います。

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用意しておいた羽織を羽織っていただき、丈を決めていきます。
最近は長い丈が多いですが、K様は短めをご希望。
羽織(コートも)は短めですとカジュアル、長めですとエレガントな印象になります。
K様はスーツを仕立てる際にも、ジャケットの丈は短くなさるそうです。
ジャケットも流行りがあるものですが、今は”肩幅を狭く”というのが主流なのだそうです。
「そのイメージで短めが好みなのかも。」とおっしゃっておりました。

洋服の流行りは早いので後々写真を見ると、「こんな時代もあったね~。」なんて、思わず笑ってしまう事もあるものです。
ですが、「それも楽しいですよね。」というお話で盛り上がりました。

本日お持ちいただいた紗羽織の丈はこの寸法でお仕立てさせていただきます。

本日のお客様 (浴衣お仕立て)

世田谷区内からお越しのH様。

今年初の浴衣のご依頼です。
まず、メールのやり取りの際に「身長が170センチあるので足りるかどうか・・・」
というご相談でした。
『仕立屋 凛』史上、女性最高身長です。

実際にお持ちいただいた反物を拝見させていただき、身丈はクリア。
裄に関しては若干短くなるものの、問題ない範囲でできることが分かりました。

身丈の問題は裁断で何とかできることもあるのですが、幅に関してはどうにもなりません。
腕の長い方、身長の高い方は出来るだけ38センチ以上の反物を購入してください。