仕事の話

やっときたかEast Tokyoの時代!

この何日か私事で家を留守にしている事が多く、メールなどの返信が遅くなってしまったお客様にはお詫び申し上げます。

さて、本日はお着物の裾直しをしたお客様がピックアップにいらっしゃいました。
お着物をよくお召しになるので裾がすぐに擦り切れてしまうのが悩みの種、という事。なので今回は裾の作り方をちょっと工夫をしました。
さて、上手くいくか・・・お客様からのご報告待ちです。

そしてお客様からの情報ですが、先日NHKの番組で、東東京が熱い!という内容の番組をやっていたとか・・・
多分『Central East Tokyo』略してCETの事だと思われる。
馬喰町から浅草橋のゾーン、いわゆる繊維問屋街。今は若者ゾーンが出来上がってきつつあるという。私も人づてに聞いてはいたので気になってはおりました。近場だし今度、お散歩に行ってみよう!
私も東東京出身なので、“熱い”と言われるとなんだか私の中の何かも燃えてくる(笑)

お客様のとの関係

着物を着るという事が日常的な事でなくなってしまった今、(日常にお召しになっている方もいらっしゃいますが)成人式にしか着物を着た事がないという和裁士も少なくないでしょう。
“縫う”だけなら機械でも良いのです。
人間が作っている以上、手作業の良さと+αがあって然るべき。

私もそれほど着る機会は多くないですが、なるべく着る機会を多くして自分の着姿や着やすさなどを研究しなければいけませんね。
お客様の着姿も拝見する機会にも恵まれると良いのですが・・・

以前、他のお客様から頂いたお言葉で今でも心に残っている言葉があります。
“才能というのは、持っている能力の事だけでは無くて、その仕事を続けている事も才能の1つなんだから頑張ってこの仕事を続けなさい。能力があっても辞めてしまう人はいっぱいいるんだよ。”と・・・
ありがたい事に私は和裁士の仕事を続けているのと同時に、お客様にも恵まれております。
これからもお客様とお互いにより良い刺激を受ける関係を築いていきたいと思っております。

今回、M様からお伺いしたお話しで参考にと教えていただいたブログがありますので、こちらもご参考になさってください。
私も自分のHPでお仕立の話などこれからは色々とお伝えしていきたいと思っています!

お客様のご要望にお応えする為に必要な事

前回のブログでお話しした事を解決する為に必要な事。

M様のご希望のお仕立は前幅に関して裾から腰にかけて広がり、腰から胸にかけて狭くなり、胸から肩山にかけて広くなるという直線の曲がりが多くなるお仕立てになります。
着物を仕立てるにあたって曲がる箇所が多い、曲がりの角度が急である寸法で縫う事は簡単ではありません。
紬の様な硬い生地は特に。
着物のお仕立は洋服の様に縫い代をカットしないので曲がりが多いと縫い代の処理が難しくなるのです。ですから縫い代をいかに上手く処理できるかというのも仕立屋の腕になるのです。

けれども、私はこの寸法で仕立てた事はありません。ですが、やった事が無いのに「できません!」と言ってしまうのはおかしい事です。
M様のご提案を私としては自分自身の大きなチャンスとして捉えたいと思ったのです。

和裁所で仕立て(技術)を教えて下さった先生は師匠でした。
これからの先生はお客様であると思わずにはいられませんでした。
お客様のご要望にお応えする為に必要な事は、まずは既成概念(思い込みを)無くすという簡単な答えだったのです。

+++次回に続く

着物の標準寸法のお話し

和裁士になる為にまず最初に習う事と言えば、標準寸法。
今の人達の体形からすると、サイズ的にはあっていないと言わざるを得ないでしょう。けれども155センチ、体重47~50kg。一昔前の日本人の平均的な体系、中肉中背のいわば黄金比率の様な物。生地にも負担をかけない(なだらかな直線縫いが多い)、和裁士としては楽に仕立てられるサイズと言ってよい。

着物を仕立てるために必要なサイズと言えば、身長、裄、バスト、ヒップ。
身長と裄は良いとしてバストとヒップから割り出す前幅と後幅。和裁士さんならそれぞれに割り出し方はあるだろうけれども、そこそこ似たような寸法になると思います。ですが、前幅から抱幅の関係。というよりヒップで寸法を測っているにも関わらず身幅に関しては裾の寸法なのです。なぜ腰の寸法で出さないのか?
実際、私たち和裁士が必ず習う標準寸法は前幅(裾の寸法)から抱幅(胸の寸法)にかけて狭くなるのです。基本的に4分~6分。(約1.5cm~2cm)
それがベーシックにある為に(最初に叩き込まれる為)、お客様に言われるまで前見頃のシルエットが台形になっている事に何の疑問も持ちませんでした。前身頃に関しては腰から裾にかけて徐々に広がっているのです。
衽幅にしてもそうです。衽幅から合褄幅にかけて狭くなっているのです。(こちらも裾広がりです。)そうするとどうしても前から見た時のシルエットが台形になってしまう為に美しくないのです。さらに太って見えると・・・女性にしてみたら気になる所ではないでしょうか?
きれいに見えるシルエットとしては裾つぼまりが1番美しいと思いませんか?

+++次回に続く

和裁士としての在り方を考えさせられた出会い

お仕立の話をこのブログでは殆どしていないのですが、今回はお仕立に関するお話をしようと思います。
それは、今まで自分の仕立てたお着物がお客様にどういう風に体に馴染むのか、着心地や見た目のシルエットや美しさを考えさせられたからです。

話の発端は、お客様のM様とお仕立の件でのミーティング。
今までM様はお着物をお仕立する時、殆どの方がそうする様に呉服屋さんを通してお仕立てをされていたそうです。
けれども自分の思いや要望が呉服屋さんを通してしまうとどうしても伝わらないと、私もとある方を通してご紹介して頂いた方です。
今回は私がお仕立したお着物に関して納得がいかない所や、もっとこうして欲しいというご要望をお伺いする為のミーティングです。

本来はこういう事がとても大切。(というかこうあるべきなのだと思います。)
和裁士という仕事は、呉服屋さん、デパートから仕立の依頼を頂いて、いわば寸法のみでお仕立てをするわけです。
実際にはお客様とはお会いすることはありませんし、感想をうかがう事も出来ません。
ですから師匠(先生)の評価のみが唯一の判断基準。ですがそれは技術に関しての事のみで本当に着心地が良いのかはまた別のお話にってしまいます。もちろん和裁所(修行中)は技術を磨く事が目的ですから、それもとても大切な事です。
これからお話しすることは、ちょっと難しい話になるかもしれませんが、M様が感じた疑問は本来は和裁士が考えなければいけない事だったのだと思います。

話が長くなりますので、何日かに分けてお伝えしようと思います。
言葉が足りない部分もあるかと思いますが、どうぞ汲み取って頂けたらと思います。

+++次回に続く